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デジタルツインからデジタルスレッドへ:エンジニアリングの進化

デジタルツインやデジタルスレッドは、製品ライフサイクル全体にわたってデータを連携させることで、エンジニアリングの在り方を大きく変えつつあります。こうした先進的な技術が、エンジニアが複雑な課題により効率的に取り組むうえでどのように役立つのかをご紹介します。

デジタルツインからデジタルスレッドへ:エンジニアリングの進化

人間の脳は、情報を処理し、パターンを認識する能力に非常に優れています。脳内のニューロンは1秒間に約1,000回の神経インパルスを伝達でき、さらに数万ものシナプスを通じて他のニューロンと接続しています。この働きを人工的に置き換えることは不可能ですが、先進技術によって人間の思考や判断を補完する取り組みは、いまや多くの業界で注目を集めるテーマとなっています。

かつては最先端とされていたデジタルツインやAI、機械学習といった技術も、いまではエンジニアが日常的に活用する一般的なツールになっています。競争力を維持し、ますます複雑化する課題に対応していくためには、こうした新しい技術の動向を常に把握し、先を見据えて活用していくことが重要です。

数年前には、デジタルツインが大きな注目を集め、ガートナーのハイプサイクルでもピークに達しました。現在では、その流れに続く形で、デジタルスレッドがエンジニアリング分野の新たな技術として関心を集めています。こうした技術が人間の思考を置き換えることはありませんが、エンジニアリングチームの連携やイノベーションの進め方を大きく変える可能性を持つ強力なツールになり得ます。

デジタルツイン

デジタルツインとは、設計仕様から運用データまでを含む、物理的な資産のデジタルモデル(いわば「双子」)のことです。タービンや自動車、モーターといった実際の装置をデジタル上で再現し、誕生から廃止に至るまでのライフサイクル全体を通じて管理できるようにする仕組みです。これにより、継続的な監視や状態評価、診断も可能になります。

デジタルツインを活用することで、エンジニアは大きな利点を得ることができます。取得した運用データを、その資産の設計情報を表すデジタルモデルと照合できるからです。この設計データは通常、製品ライフサイクル管理(PLM)システム、あるいはモデルベースエンジニアリングを用いた3D PLMシステムに保存されています。

デジタルスレッド

さらに意欲的で有望な概念として注目されているのが、デジタルスレッド(digital threading)です。一般的に、デジタルスレッドとは、製品や資産に関するデータとその流れを、製品ライフサイクルのすべての段階にわたって結び付けるための枠組みを指します。デジタルスレッドでは、AI を活用して、人間がパターンを認識し処理する能力を模倣します。関連しているデータポイントを明示的・暗黙的の両面から見つけ出し、それらを結び付けて「糸のように」つなぐことで、概念の理解、問題解決、問いへの回答、そして根拠に基づく意思決定を可能にします。

しかし、最も単純な資産であっても、その資産に関する情報へのリンクは膨大な数に及び、しかも複数の異なるシステムに分散して存在しています。情報がどこに保存されているかを考えてみると、その範囲の広さが分かります。PLM システム、要件管理システム、ERP システム、SharePoint、プロジェクトファイル、サードパーティのサイト、メールなど、さまざまな場所に情報が散在しています。こうした状況を踏まえると、それらを一つ一つ結び付けていくことの大きさが見えてきます。

では、デジタルスレッドはどのようにデジタルツインを発展させ、機能を広げるのでしょうか。デジタルツインは、非構造化データへの対応という点では十分とはいえません。例えば、エンジンの性能データが仕様の範囲から大きく外れた場合を考えてみてください。現在のプラットフォームでは、ルールや一部の機械学習を用いて、そのシステムにどのように対応すべきか、故障にどう対処するかを判断させようとしています。 一方、デジタルスレッドでは、自然言語処理(NLP)、ディープラーニング、セマンティック分析といった技術や概念を活用し、さまざまな情報をデジタルツインと結び付けていきます。

デジタルスレッディングによるエンジニアリング課題の解決

では、デジタルスレッドは、現在ニュースでも取り上げられているような巨大で複雑なエンジニアリング課題をどのように解決できるのでしょうか。こうした問題の多くは、複数の複雑なシステムにまたがり、あらゆる接点にわたって数十億ものデータポイントが関係しています。それらを整理し、関係性を把握する作業は非常に負担が大きく、多くの企業にとって十分に対応できる体制が整っていないのが実情です。

デジタルスレッドは、問題解決や意思決定に必要な膨大なデータを結び付けるという課題に対応する仕組みです。AI 技術を活用してビッグデータを自動的に整理・分析し、重要な情報同士のつながりを見つけ出します。これにより、これまで人の頭の中でしか把握できなかったような関係性も可視化され、たどれる形で活用できるようになります。

デジタルスレッドの応用範囲は非常に広いものです。現在、Accuris のような組織では、デジタルスレッドを活用して、ある意味で人間の脳の働きをデジタル上で再現することを目指しています。人間の脳は、データを取り込み、それらの間の関係を見つけ、処理し、その結果として世界やデータセットについての理解を形成します。この考え方を企業全体に広げてみると、そこには一つの脳ではなく、多くの「脳」が存在します。さまざまな分野の専門家(SME)が、それぞれ異なる視点でデータを結び付け、多様な知見を生み出します。企業の課題を解決する際には、こうした専門家のチームが日々データを分析し、その情報を基に、企業が直面する非常に複雑な問題にも対応していきます。

エンジニアリング分野におけるデジタルトランスフォーメーションの次なる展開は?

Accuris は、エンジニアリング分野におけるデジタルトランスフォーメーションの最前線に位置しています。Accuris の Engineering WorkbenchGoldfire といったソフトウェアソリューションには、ディープラーニングなどの高度な AI 技術が活用されており、デジタルスレッドを実現するための独自のディープサーチアルゴリズムが組み込まれています。これらの検索アルゴリズムは最先端の AI 技術を基盤としており、技術コンテンツをもとに学習し、仮想的な「ニューラルネットワーク」ともいえる技術知識の体系の中から、問題解決に必要な情報を見つけ出し、答えを導き出せるように最適化されています。

Accuris は、データを単なる構造化コンテンツやテキストとしてではなく、ベクトルとして捉えます。これらのベクトルに対して一連の数式による分析を行い、情報同士の関係やつながりを特定します。こうして得られた関係性は「ナレッジグラフ」に反映されます。これは、企業の知識の世界において星を配置していくようなイメージです。データポイント同士のつながりが可視化されることで、新たな洞察が得られ、根拠に基づく意思決定が可能になります。データに解釈が加わることで、それは知識へと変わります。

デジタルスレッドの本質は、これまでデジタルでは結び付けられなかった情報をつなぎ、エンジニアが課題を解決する方法そのものを変えることです。

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