ソーラー業界が抱える深刻な粉塵問題
太陽光発電市場は近年、急速なペースで成長しており、この業界では過去10年間だけでコストが85%も急落しました。1
「世界全体の汚れによるエネルギー伝達損失は3~4%であり、2023年には世界全体で41億~72億ドルの損失が生じると予測されています。」
– Fraunhofer Center for Silicon Photovoltaics CSP
太陽光エネルギーの利用はますます広がっていますが、業界は依然として課題や困難に直面しています。世界中の太陽光発電施設で影響を及ぼしている意外に難しい問題の一つが、パネル表面のほこりです。業界では「ソーリング(soiling)」と呼ばれ、太陽光発電施設のどの地域でも共通して発生しています。太陽光パネルの表面にほこりや微粒子が蓄積すると、PV(Photovoltaic)発電が抑制され、発電量が地域によって2~50%減少することがあります。2019年、Fraunhofer Center for Silicon Photovoltaics(フラウンホーファー・シリコン太陽光発電センター、CSP)は、世界全体のソーリングによる光透過損失を3~4%と算出しており、2023年には世界で約41~72億ドルの損失が予測されています。
1 2022 Renewable Energy Industry Outlook(2022年再生可能エネルギー業界の展望)。Deloitte, 2022年3月。
2 Power loss due to soiling on solar panel: A review(太陽光パネルのソーリングによる電力損失:レビュー)。Maghamiほか, Universiti Putra Malaysia, 2016年6月。
3 Techno-Economic Assessment of Soiling Losses and Mitigation Strategies for Solar Power Generation(太陽光発電におけるソーリング損失と軽減戦略の技術経済的評価)。Ilseほか, Fraunhofer Center for Silicon Photovoltaics(フラウンホーファー・シリコン太陽光発電センター、CSP), 2019年9月。
過剰な粉塵や汚染物質によるコスト
解決策は一見シンプルで、ただパネルを清掃すればよいように思えますが、この方法には次のようなコストが伴います:
エネルギー
清掃装置を稼働させるにはエネルギーが必要です。太陽光パネルは夜間に冷え、朝には露が付くため、ほこりや大気中の汚染物質がパネル表面に付着するとセメントのように固まり、高出力のロボット清掃装置を使わないと取り除くのが難しくなります。この装置は、エネルギーや費用がかかるだけでなく、清掃作業自体が環境に悪影響を及ぼす場合もあります。
お金
米国コロラド州の国立再生可能エネルギー研究所は、「10メガワットの太陽光発電所(1日あたり2,000世帯に電力を供給可能)のパネルを一度清掃するだけでも、約5,000ドルの費用がかかる」と推計しています。10MW規模の発電所が毎月1回パネル清掃を行う場合、年間で約60,000ドルの予算を見込む必要があります。
当社の顧客は、世界各地の湿度が高く、大気中に多量の粉塵や汚染物質が含まれる地域において、数千枚のパネルを備えた45か所以上の太陽光発電所を所有・運営しています。エンジニアリングチームは、パネルに粘着性のある粉塵が付着するのを防ぎ、発電効率を高める方法を見つける必要がありました。そこで、これまで太陽光パネルの配置や設置などの業務で継続的に活用してきたAccurisの製品であるGoldfireを用い、この課題にも対応できるか検討しました。
4 太陽光発電の研究者たちが、粉塵にまつわる問題の解決に挑む。国立再生可能エネルギー研究所。2021年4月。
問題
クライアント:
世界中で45カ所以上の太陽光発電所を運営する、再生可能エネルギー分野のリーディングカンパニー
ユーザー:
(イノベーション担当副社長)、設計エンジニア、研究開発部門

課題点
イノベーション担当副社長は、分野横断で解決策を見つけるようエンジニアリングチームに指示し、特に自然界の仕組みに着目するよう求めました。チームは、実験で再現可能で、太陽光パネルに適用できる撥水性の技術を探し始めました。
次のような課題を抱えてAccurisに相談しました:
- 自然界にヒントを求め、それを設計に取り入れる解決策を見つけることが同社にとって重要でした。
- 関連情報の特定には時間がかかり、成果も得られませんでした。チームは情報を手作業で探し、回答を見つけるために文書を一つひとつ確認していました。
- バイオテクノロジー、植物学、バイオミミクリーといった科学分野における専門知識の不足により、どこを調べれば答えにたどり着けるのか見当がつきませんでした。
- 従来の検索エンジンは、検索クエリに基づいてキーワードのリストを表示しますが、文脈に関する情報は一切表示されません
- 以上の要因により、チームが重要な情報を見落とす可能性が高い状況でした。
解決策
Goldfireは、最先端の機械学習および自然言語処理技術によって駆動されており、人間の脳が認知的なつながりを生み出すのと同様に、業界や分野を横断して情報を結び付けることができます。

Goldfireの認知検索機能を活用し、チームは植物分野に着目して解決策を探索、複数の工学・科学領域にまたがる情報を横断的に分析した結果、わずか2日で超撥水表面に関する2019年の論文から重要な知見を特定し、求めていた答えに到達しました。この論文では、ハスの葉の表面に存在する多層構造のワックス状突起により、水滴や汚れなどをはじく自己洗浄性が生まれることが示されており、これは「ロータス効果」と呼ばれています。
さらにチームは、2015年の論文において、自動車、海洋機器、風力タービン、さらには太陽光パネルにも塗布可能な超撥水性の透明コーティングに関する研究を特定しました。ハスの化学的特性を基に、あるメーカーがロータス効果を模倣したこのコーティングを開発しており、表面に自己洗浄機能をもたらします。これを太陽光パネルに適用すると、水滴やほこりは表面に付着せず、そのまま転がり落ちるようになります。
当社の顧客はGoldfireを活用してこの研究にたどり着き、自然が何十億年にもわたって培ってきた知見を応用し、代替エネルギーおよび再生可能エネルギー分野における革新的なブレークスルーにつなげました。
- GoldfireのAIによる認知検索は、ユーザーを答えへと導きます。単なるキーワードの一覧にとどまらず、文脈や意味に基づいて異なる知識を結び付け、人間の脳のように情報を取捨選択しながら関連性の高い内容を抽出します。
- 機械学習と自然言語処理により、クエリを6つの異なる言語で文脈に基づいて解析し、業界横断で回答と関連知識を提供します。
- 世界中の科学・技術文献を業界や工学分野を横断して索引化することで、ユーザーが求める答えをより迅速かつ効率的に見つけられるようにします。
結果
当社の顧客は、調査開始からわずか2日で必要な答えにたどり着きました。Goldfireがなければ、その発見には数週間から数か月を要していた可能性があります。Goldfireがインデックス化した特許情報を通じて、調査チームはロータス効果を模倣した塗料のメーカーを特定し、その情報を製品チームに共有、既存製品への応用につなげました。
Accurisの研究チーム:
- GoldfireのAIの力を活用することで、時間・労力・コストを大幅に削減しました
- 自然界に存在する自己洗浄の仕組みを特定し、自社の課題に応用しました
- 超撥水コーティングのメーカーを特定し、課題解決と既存製品への適用に向けてプロセスを効率化しました
- 太陽光発電所のレイアウト設計や新規拠点の立ち上げまでの期間短縮といった他の課題に充てられる、数週間分のエンジニアリング工数の削減につながりました。
- Goldfireを活用した信頼性の高い新たな調査手法を検証・確立し、それを他の革新的なプロジェクトや再生可能エネルギー製品分野にも展開できるようになりました
Accurisについて
Accurisは、AIを活用したデータおよびワークフローソリューションを通じて、年間5億ドルの継続的な収益を生み出しているエンジニアリング特化型のテクノロジー企業です。60年以上にわたり、エンジニアは当社のデータと技術を活用して革新と課題解決を進めており、構想にかかる時間を70%削減し、製品およびプロセスの不具合を最大で5倍削減しています。
当社は、100カ国以上、数十の業界(航空宇宙・防衛、エネルギー、サステナビリティ、建設、建築など)において、6,000社を超えるグローバルな顧客および65万人のエンジニアリング分野のエンドユーザーと連携しています。
Accurisは、400以上の標準化団体と連携し、それぞれの非営利としての使命を支援するとともに、世界中のイノベーションと発展を支える230万件のエンジニアリング規格へのアクセスを効率化します。Accurisは、知識を組み込んだテクノロジーを提供し、より良い世界の実現を支援します。